台風被害を踏まえた基準風速等に応じた小屋組の接合方法について

 昨年の令和4年1月1日に施工された耐風性能に配慮した小屋組の接合方法について2023年版工事仕様書に掲載されましたので、変更点などを調べてみました。
仕様書では新たに付録7として【都道府県市町村別の基準風速一覧表】を付録8では基準風速に応じた【小屋組の接合方法について】が掲載されました。
たる木の接合方法、小屋束の接合方法についてご紹介します。


付録8 基準風速等に応じた木造小屋組の接合方法について

 近年の台風や強風により、戸建住宅の屋根に大きな被害が発生した事例が確認されている。こうした事例を踏まえ、国土交通省では、「屋根ふき材、外装材及び屋外に面する張壁の構造方法」(昭和46年建設省告示第109号)を改正した。

 また、耐風性能に配慮した小屋組の接合方法については、建築基準法ほか関係法令を補完する目的で、基準風速等に応じた木造小屋組の接合方法が、公益財団法人日本住宅・木材技術センターにより示された。基準風速や金物の種類等に応じた接合方法を次表に示したので、参考にされたい。
 なお、地域ごとの基準風速は告示によって定められており、付録7に示した。

<表の見方>
①標準仕様
 建設地が沿岸部(目安として、海岸線から200mまでの範囲)以外の場合に、記載している仕様の種類を選択する。

②強風の実況に配慮した仕様
 建設地が沿岸部や局地的な地形の影響を受けて風速が割り増しされる恐れのある建設地(斜面上の立地など)の場合に記載している仕様の種類を選択する。

③強風の実況に配慮した仕様(吹込みあり)
 強風や飛散物によって開口部が破壊し、開口部から屋内に吹込む強風によって、小屋組みに対する屋内側からの風圧力が増加することが想定される場合に、記載している想定の種類を選択する。
 なお、開口部にシャッター等を設けることや、強風時に有効なガラスを採用すること等、吹込みへの対策を講じている場合は、②の仕様を選択することも可能である。
 また、吹込みへの対策を講じることが難しい場合は、③の仕様を選択する。
 表より、建設地の基準風速、さらに、①標準仕様、②強風の実況に配慮した仕様、③強風の実況に配慮した仕様(吹込みあり)、のいずれかを選択することで、耐風性能を向上させた小屋組の適切な接合仕様を読み取ることができる。

基準風量に応じた小屋組の接合方法表(PDF)はこちらから

全国の基準風速地図

<表の留意点>
 表から適切な接合仕様を読み取る際、使用する部材の樹種、たる木・母屋の間隔、軒の出等によって接合部の耐力が異なるので注意が必要で、表に示す条件と異なる場合には、構造計算によって安全性の確認を行う必要がある。
 詳細については、「木造軸組工法住宅の構造計画 耐震・耐風性向上のための壁量計算等の基本的な解説・演習から告示の最新情報まで」(発行:公益財団法人日本住宅・木材技術センター)を参照すること。


要約

 近年の強風による大きな被害の発生事例を踏まえ耐風性能に配慮した屋根ふき材の施工方法や小屋組の接合方法が改正されました。新たに市町村別基準風速一覧表と基準風速に応じた小屋組の接合方法が示されました。海岸線から200m以上離れている地域は標準地域となります。地形の影響などで風速が割り増しされる恐れのある建設地には、強風に配慮した仕様が示されました。
 強風による飛散物により開口部が破壊された場合に、開口部から屋内へ吹込む風圧力への対策仕様を基準風速別に仕様を選択できるようにした。開口部にシャッターを設けたり、強風に配慮した強化ガラスを採用することで②の仕様を選択することが可能になる。

 ほとんどの地域が、標準地域に含まれることが多いと思われますが、建設地が市町村別基準風速一覧表の比較的風の強い地域に位置する現場では、示された接合方法を順守して工事する必要があります。ご注意ください。

たる木の接合方法について

これまでの工事仕様書では、桁にひねり金物STもしくはくら金物SSを当て、釘打ちとしすべてのたる木を留め付ける。とあります。
軒の出寸法やたる木の樹種・軒の出寸法・たる木軒けた接合・たる木母屋(むな木)接合など金物の種類別に接合方法が示されました。新たな接合金物としてZマークの四角穴付きタッピンねじSTS6.5F脳天打ちも追加されました。しかしながらZマーク四角穴付きタッピンねじSTS6.5Fはほぼほぼ市場には出回っていないようです。
現状ではひねり金物・くら金物の使用から各社ねじメーカーから発売されているひねり金物ST同等のたる木ビスの採用が増えています。脳天打ちビス留めが増えている要因は施工時間の短縮とたる木-母屋接合で床倍率の計算にプラス出来るということが要因とも考えられます。長期優良住宅などの耐振等級3を取得する工務店様が増えていることも要因の一つと考えられます。

基準風速等に応じた小屋組み接合方法から見ますと、標準仕様の地域が多いためこれまでの仕様で継続される工務店様も多いようです。

お薦めの『たる木の接合方法』は、たる木ビスによる【たる木-母屋(むな木)接合】になります。

たる木ビスでの接合がお薦め理由

①基準風速などに応じた接合方法に多くの地域で準ずることが可能
②耐震等級3の取得も可能
③施工時間の短縮でコストダウンにもつながる

たる木ビスのメーカーは多数ございますが、どのメーカーの製品でも即納体制が整っております。

メーカー別100本あたりの金物予算

小屋束・小屋ばり接合方法について

 これまでの工事仕様書では、『小屋束上部・下部の仕口は、短ほぞ差しとし、かすがい両面打ちまたは平金物当てくぎ打ちとする。』とありました。
 2023年版の工事仕様書では、建築地の基準風速に応じた接合方法が定められました。これまで通りのかすがい両面打ちの工法は標準仕様で基準風速36地域までしか認められません。38地域以上では地域に応じた接合方法が必要となります。新しく追加されたZマーク金物のひら金物SM-15Sやコーナー金物CP・ZSのほか従来からのかど金物CP・T、山形プレートVP・VP2などで接合することになります。しかしながらSM-15SやCP・ZSは現在市場にほとんど出回っておりません。現状では、現在市場で多く出回っている各メーカーのZマークCP同等品を代替せざるを得ないかと思います。
 各金物メーカーのプレートタイプもしくはコーナータイプの中から短期耐力が5.6KN以上の金物を選択することが望ましいと考えます。
 基準風速が38以下の地域ではこれまで通りのかすがい両面打ちは可能です。

お薦めの小屋束・小屋ばりの接合方法

お薦めの『小屋束・小屋ばりの接合方法』は、金物メーカーの(は)の金物を選定する。

 基準風速が38以下の地域ではこれまで通りのかすがい両面打ちは可能です。
 かど金物を選択される方には基準耐力を満たした中で、ビスの本数が少ない金物が施工時間短縮の面からも推奨します。

小屋束100本施工の場合の予算シミュレーション

小屋束の接合方法まとめ

小屋束の接合方法は基準風速が38以上の地域では、かすがい両面打ちはできません。かど金物CP以上の耐力が必要となります。プレートタイプもしくはコーナータイプの試験済み製品を採用するか、新たに加わったZマーク金物のひら金物SM-15S(4.5KN)かコーナー金物CP-ZSを使用するこのになります。しかしSM-15SとCP-ZSはまだ市場には出廻っておりません。又コスト面でも金物メーカーの試験済み製品のほうが断然お得になっています。基準風速38以上地域または強風の実況に配慮した仕様で施工する場合にはプレートタイプ又はコーナータイプの製品をお薦めします。価格シミュレーションをみてもかすがい仕様と、かど金物仕様の価格差はほとんどございません。金物選定のには、建築地域の基準風速を確認したのち必要耐力を満たす金物をお選びください