バルコニー手すり壁の漏水&結露リスク低減のご提案

2023年7月12日

近年、築浅バルコニー手すり壁での漏水や木材腐朽菌による被害が話題になっております。屋根や外壁の塗り替え工事の際に多く見かけられているようです。多くの場合、通気工法が取り入れられる前の工事であったり、通気工法採用の家でも、仕様がしっかり定まっていなかった時期の物件で多くの不具合が発生しているようです。
雨仕舞をしっかりと考え、手すり壁上部からの雨水侵入を徹底的に抑えた結果、湿気を多く含んだ壁内空気の排出口が塞がれたことで、結露が発生し腐朽菌による木材の腐れが進んだと思われる事故が多く見られています。

国総研 第Ⅺ 木造住宅外壁の劣化対策重点部位の推奨納まり図(案)参照

また手すり壁上部にサイディング材を裏返して通気層を塞ぐなどの例も多く見られます。結露リスクより漏水リスクを優先したものと考えられます。漏水は瑕疵に繋がるが結露については、瑕疵の対象外になっているということも、結露リスクを軽んじてしまうという結果に繋がってしまったのかもしれません。

国総研 第Ⅺ 木造住宅外壁の劣化対策重点部位の推奨納まり図(案)参照

そこで、バルコニー手摺壁の納め方について調べてみました。国総研資料とフラット35の資料から報告します。

国土技術政策総合研究所推奨の納まり

国総研資料 第975号【木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様とその評価に関する研究】より

木造住宅の外壁は通気工法が主流となり、バルコニーの手すり壁部にも通気層を設けることが多くなった。
その通気層の上端、つまり手すり壁躯体天端を(写真2.3.3)のように木下地や窯業系サイディングを裏返して張り付け通気層を塞いだ事例がしばしば見られる。これは結露リスクよりも漏水リスクを優先した納まりで好ましくないといえる。漏水は、台風等の自然災害時に起こりやすく事業者にとってクレームによる損害に繋がりやすい。一方、結露は原因特定に時間がかかりわかりにくいため、事業者にとって直接的な損害に繋がりにくいという一面がある。

南面に設置されることの多いバルコニー手すり壁は、温められた空気が水蒸気を多く含みながら通気層を通って手すり壁上端に達することが考えられ、通気層上端を閉じた仕様になっていると、排気や俳湿がされないまま外壁の内部に滞留した空気が温度の低い部分で結露を生じることがあり、木部腐朽(写真2.3.4)や金属
腐食の発生リスクが高くなる。木下地や窯業系サイディングを留め付ける釘(ねじ)が手すり壁上端の鞍掛シ ートを貫通し漏水リスクを高める恐れもある。日本窯業外装協会では、窯業系サイディングの標準工法や施行手順を示しており、その指針によれば、サイディングの裏側を表面として使用することやサイディングを水平に置いて使用することはいずれも禁止事項である。また、バルコニー手すり壁は、外観デザインのアク
セントとして利用される部位でもあり、飾り開口(写真2.3.5)などを設けることがある。この場合は、防水の弱点になりやすい凹凸出入隅を多くつくることになるため、防水措置には細心の注意を払わなければならない。


住宅金融支援機構 2023年版【フラット35】対応木造住宅工事仕様書には新たに通気層を設けたバルコニー手すり壁の仕様書が追加されました。2019年版では防水紙は両側とも反対側に巻き込み、150㎜以上立下げることになっていました。その上に鞍掛シートを被せて両側100㎜以上立下げ、次に両面防水テープを挟んでブラケットを取り付けることになっていました。

2023年版【フラット35】対応木造住宅工事仕様書推奨の納まり

2023年版【フラット35】対応木造住宅工事仕様書 より抜粋

8.16.1バルコニー手すり (2023年版【フラット35】対応木造住宅工事仕様書 P.226)
1. 手すりには、金属製の笠木を設ける。

2. 手すり壁の防水紙は、手すり壁に外壁内通気措置を施す場合は、本章8.4.1(—般事項) の1のイにより、手すり壁をモルタル下地ラス張り工法とする場合は、本章9.2.2 (材料)の1による。手すり壁の上端に張る鞍掛けシートは、改質アスファルトルーフイング、先張り防水シート、鞍掛けシート又はこれと同等以上の性能を有するものとする。なお、先張り防水シート及び鞍掛けシートの品質としては、一般社団法人日本防水材料協会のJWM A規格A01がある。

3. 手すり壁の上端部は、次のいずれかによる。 (2023年版【フラット35】P.229)
  イ. 立ち上げた防水紙を手すり上端部まで張り上げる場合
    (イ)手すり壁の外側及び内側の防水紙は、手すり壁上端位置まで張り上げる。
    (口)手すり壁の上端部の下地は、幅100mm以上の両面粘着防水テープを長手 方向に通し張りする。
    (ハ)両面粘着防水テープの上に鞍掛けシートを長手方向に張り掛け、手すり壁 の外側及び内側に100mm程度立ち下げる。鞍掛けシートの立下り部分はステープルで留め付ける。
    (二) 鞍掛けシートの上から笠木を留め付ける。笠木取付け金物(ホルダー)の固 定用ねじと鞍掛けシートとの取合い部には、シーリングを充填する。
  
   口. 立ち上げた防水紙を手すり上端部で重ねる場合
    (イ) 手すり壁の外側及び内側の防水紙は、手すり壁上端からそれぞれ反対側に巻き込み、150mm以上立ち下げる。防水紙の立下り部分は、ステープル 又は防水テープで留め付ける。
    (口) 鞍掛けシートは、手すり壁上端で折り曲げ、手すり壁の外側及び内側に 100mm程度立ち下げる。
    鞍掛けシートの立下り部分は、ステープル又は防水テープで留め付ける。
    (ハ)笠木を取り付ける位置の鞍掛けシートに両面防水テープを張り、防水テープの上から笠木を留め付ける。

4. 手すり壁と外壁との取合い部は、手すり壁の防水紙を外壁の防水紙の裏に差し込み、防水テープで有効に止水する。

5. 手すり壁に飾り窓(風窓)を設置する場合は、1から3に準ずる。

8.16.2外壁内通気措置 (2023年版【フラット35】P.208)
  手すり壁に外壁内通気措置を施す場合は、本章8.4 (外壁内通気措置)による。

8.16,3笠木手すり
1. 笠木手すりは、支柱部分から笠木の内部に雨水が浸入しにくく、浸入した雨水は排出しやすい構造のものとする。

2. 笠木手すりは、熱応力等による伸縮に対して、止水材の破断等が生じにくい構造のものとする。


禁止すべき納まり

・サイディング裏張りは禁止です。(現行では多数見られます)
・サイディング裏張りや木下地で通気層を塞いではいけません。

推奨納まり

・透湿防水シートを天端まで張り上げる。
・天端へ両面防水テープを通し張りする。
・鞍掛シートで天端を覆う。
・ブラケットビス穴部分にシーリング材注入後ビス止めしビス頭部もシーリングする。
・アルミ笠木を取り付ける。

問題解決お薦めアイテムのご提案

日本住環境株式会社【笠木天端スペーサー】

笠木天端スペーサーの良いところ
・笠木天端スペーサーは笠木部分の通気を確保しつつ、しっかりとした防水性能が確保できます。
・納まり図に従って施工することで、確実な通気経路の確保と防水措置を取ることができる。
・施工性に加え、強度も十分。荷揚げ場所や踏み台になるバルコニーでの養生材としても活躍します。
・外壁側の通気を上部スペーサーを通じて内壁側に排気することができるので外壁とアルミ笠木の隙間を無くすことができすっきりとした外観に仕上げることができる。

施工方法
・笠木天端へ両面防水テープ75㎜以上を通し張りする。
・笠木天端スペーサーの向きを合わせて、笠木天端の防水テープに仮付けします。
・外壁側は通気胴縁外側ラインに合わせて貼ります。
・出入隅は45度にカットして突き合わせて仮付けします。調整できる方が室内側になります。
・ジョイント部分は防水テープ処理します。テープは先端を巻き込んで貼りつけます。
・外側部分の外壁材を取り付けます。
・天端スペーサーを釘で胴縁に固定します。製品の下部の止水パッキンを外壁材に当ててしっかり潰してください。
・外側の外壁材と本体との取合い部分は外壁材を巻き込んでテープ処理してください。
・アルミ笠木のブラケットの下穴を開けシーリング処理後、笠木を取付て完了です。