【特別寄稿】シロアリや腐朽被害にご用心!

匠の一冊ではあらたな試みとして、メーカー様に特集記事を寄稿いただきました。
より専門的な内容で執筆いただきました。


 

株式会社吉田製油所
代表取締役社長 吉田善彦

はじめに

私は仕事柄、工務店さんやリフォーム屋さん、ホームインスペクターさんとお会いすることが多いですが、皆さん、シロアリや木材腐朽菌に対する警戒心が弱いと感じます。私は、皆さんがシロアリや木材腐朽菌の激しい被害に遭った時にだけ呼ばれて調査に行くため、皆さんにとっては数少ない経験で、「何十棟も建てたのに何でここだけ。」というようなケースでも、私にとっては日常なのです。

そこで私は、激しい被害を頻繁に見ており、シロアリや木材腐朽菌をとても恐ろしい物と感じています。特に激しい被害が発生するのは、雨漏りしていた場合です。日本には主に北海道の東部を除く全域に分布するヤマトシロアリと、温暖な地域に分布するイエシロアリが生息しています。ヤマトシロアリは湿った木材しか食べませんので、被害が土台や床組のみの場合が多いですが、雨漏りしている場合は別で、上から水が供給されて木材を濡らすため、ヤマトシロアリでも上の方まで上がって来ます。木造3階建ての3階の屋根まで食べられていることがあります。このような場合、同時に腐朽も進行しています。一方、イエシロアリは、自分で水を運べる能力があるため、雨漏りが無くても建物の上の方まで食べることができます。

 

シロアリと腐朽被害

写真1
写真2

 

 

 

 

 

 

 

 

上の写真1、2は出窓とバルコニーの手すり壁の雨漏りによって、腐朽とヤマトシロアリの被害に遭った建物です。雨水が建物の上部から下部まで濡らして木材が腐朽し、その水を伝って白アリが上がって来ています。雨漏りはシロアリと腐朽の直接の原因となりますので、少しでも放置せず、直ぐに補修が必要です。但し、この場合でも、床下部分が定期的にシロアリ予防処理されていれば、シロアリが上がってくることはなかったかもしれません。また、この建物の場合、さらにシロアリの侵入を容易にする不適切な部分がありました。

 

シロアリの兆候

写真3
写真4

左の写真3のように、基礎に隣接して花壇が設けられ、建物の土台と花壇の地面とが接していたのです。ここからシロアリが侵入していました。シロアリの侵入を防ぐため、木部と地面はできるだけ離さなければなりません。 また、ここまで激しい被害が出ている場合、羽アリの発生など、住人が気付くことのできる、兆候があったはず です。

羽アリはヤマトシロアリの場合、東京では4月の終わりから5月の初めにかけて、左の写真4のように数千匹の大群が同時に飛び立ちます。羽アリだけをエアゾール殺虫剤で退治して、終わったと思っている方が多いですが、羽アリはシロアリのコロニーのほんの一部で、生き残った働きアリが建物を食べ続けています。そこで、翌年もまた同時期に羽アリが発生します。年に一度のシロアリ被害の明らかな兆候を住人が見逃していたことも、被害拡大の要因になっています。シロアリや腐朽の大きな被害が出ている場合は、このように複数の要因が重なっている場合が多いです。

 

おわりに

弊社のホームページには、シロアリや腐朽の被害に遭った建物を紹介しています。これをご覧いただき、シロアリや腐朽菌の恐ろしさを理解いただき、同じような被害に遭うことの無いよう、くれぐれもお気を付けください。

弊社のホームページはシロアリ、木材腐朽菌等の情報が豊富に掲載しています。詳しくは下記URLから閲覧できます。

 

 

http://www.ysds.co.jp/